mikapen’s diary

アメリカに住んでいます。旅行と読書と音楽が好きです。私のくだらないお話を聞いてください。

初めて小説を書いてみます11

つづきです。

 

☆☆☆

五、

マライアキャリーの明るい歌声が響くと、ツリーもイルミネーションも無い小さなコンビニの店内も、何となく浮足立ったように感じるのは不思議だ。今日はクリスマスイブ。高校生カップルがレジを通るたびに亮介は「うらやましいっすね。」と言った。
「あのさ、立花君、語尾に『ね』をつけるの、やめてもらえないかなぁ?」
「美雨さんだって、イブにバイトしてるんすから、俺たち寂しい者同士っすよ。仲間っす。」
「私は、別にうらやましいって思ってないもん。」
「またまたー。そんな強がらなくても良いんすよ。」
美雨は、返す言葉が見つからず、ため息をついた。
「俺、最近バイト漬けで、全然デートとかしてないんす。あー、人肌恋しいなー。」
亮介は、相変わらずのお気楽者だ。
「立花君は、その気になればすぐデートくらいできるでしょ?女の子から告白されないの?」
「全然されないっすよ。それに、美雨さんのことを一途に想ってるんです。」
ふいに真剣な顔で美雨を見つめた後、右目をパチパチパチとウインクをした。美雨は冗談だと分かっていながらも、ついドキドキしてしまう。『かっこいい』と叫びだしたくなる衝動を抑えるために、「もう、からかわないでよ。」と、プイっとそっぽを向いた。冬休みが始まり、2人は毎日働いている。亮介はお金を稼ぐために、美雨は暇だからであるが、レジの前で並んでいると、まるで熟年夫婦になったような気さえする。
「彼氏さんとはデートしないんすか?」
「しないよ。向こうは普通に仕事あるから。」
「社会人は大変っすね。あーやだやだ。なりたくない。」
「だね。それに、年末年始も友達とスノボに行くから会えないって言われちゃった…。」
「そうなんすか。悲しいっすね。」
「やっぱり。私も寂しい者仲間かも。」
「よおし、寂しい会でも結成しますか。」
「ひゃー、それは入りたくなーい。」
急に亮介は、ギターを弾くマネをしながら「寂しい夜はごめんだー、寂しい夜はつまんなーい」と歌い出した。美雨は、何ていう歌か知らなかったが、聡と会えないことで、正直かなり凹んでいたので、いつも通り陽気な亮介に救われた。

 

☆☆☆

 

みかぺん