mikapen’s diary

アメリカに住んでいます。旅行と読書と音楽が好きです。私のくだらないお話を聞いてください。

初めて小説を書いてみます7

今日も続きです。

 

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三、

 

たった数か月離れていただけなのに、聡は垢抜けたように見えた。
大学生のころはアメフト部の練習が毎日あったせいで、ジャージ姿が定番だったのに、今日は薄いブルーのシャツがとても爽やかに馴染んでいる。それに加えて、パーマを当てられた髪型も以前とは別の印象を放っていることは間違いない。
でも、きっと彼の変化は見た目だけではない。東京に住めば人間としての感性やセンスが内面から高まるのだと、地方の人間は思っている。
美雨は、ドキドキしていた。それは、半分は久し振りのデートへの高揚だが、半分は今の聡と自分は釣り合わないのではないか、このまま振られてしまうのではないか、という焦燥感から来る不安のせいだ。
2人は、芸能ニュースや共通の友人の話などを適度にしながら、茹るような猛暑の中を東京駅から日本橋方面に、ぶらぶらと歩き、ビルの合間でひっそりと営業している定食屋に入った。
「聡君、実は報告したいことがあって。」
「何だ?」
「えっとね。就職先が決まったの。」
「お!ついに受かったのか。どこの会社だ?」
「なんとね…、愛知商会なの。」
「すごい。そこは大手だぞ。俺より給料が良いんじゃないか?電話では、かなり苦戦してる話しぶりだったのに、美雨やったな。おめでとう。今日はお祝いだな。」
と言ったあと、聡は照れくさそうに鞄から小さな箱を差し出した。

 

☆☆☆

 

みかぺん