mikapen’s diary

アメリカに住んでいます。旅行と読書と音楽が好きです。私のくだらないお話を聞いてください。

初めて小説を書いてみます1

タイトル「梅雨明ける恋(仮)」

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一、

 日曜の夕方の名古屋駅、長浜美雨(ながはま みう)は、声をあげて泣いていた。
明日から始まる一週間に向けて急ぎ足に歩く人々から、ちらちらと見られていることなど、もはやどうでもよかった。もう涙は自分で止めることはできない。他人の目なんて気にせず、彼の太い腕の中に包まれて甘い雰囲気を存分に味わっていたかった。ただ、それだけだ。
 いよいよ発車時間が迫る。

「聡君、付き合ってから1年間すごく楽しかったよ。」
また、大粒の涙が流れる。
「おいおい、永遠の別れじゃないんだから、そんな言い方するなよ。」
「そうなんだけど、今までみたいに気軽に会えなくなるでしょ。」
「そうだな、毎日連絡するよ。」
「うん、待ってる。」
「なるべく会えるようにするから、そんなに泣かないでくれ。」
「うん、嬉しい。体に気を付けてね。」
「ありがとう。美雨もな。」
「あと、お仕事も。頑張ってね。」
「ありがとう。」
 上原聡(うえはら さとし)は美雨の顔を両手で包むようにして、親指で涙を拭いたあと、ヨシヨシと頭を2回なで、
改札の向こうへと進み、振り返って手を挙げて微笑んだ。
美雨も笑った。

 

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《つづく》