mikapen’s diary

アメリカに住んでいます。旅行と読書と音楽が好きです。私のくだらないお話を聞いてください。

初めて小説を書いてみます7

今日も続きです。

 

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三、

 

たった数か月離れていただけなのに、聡は垢抜けたように見えた。
大学生のころはアメフト部の練習が毎日あったせいで、ジャージ姿が定番だったのに、今日は薄いブルーのシャツがとても爽やかに馴染んでいる。それに加えて、パーマを当てられた髪型も以前とは別の印象を放っていることは間違いない。
でも、きっと彼の変化は見た目だけではない。東京に住めば人間としての感性やセンスが内面から高まるのだと、地方の人間は思っている。
美雨は、ドキドキしていた。それは、半分は久し振りのデートへの高揚だが、半分は今の聡と自分は釣り合わないのではないか、このまま振られてしまうのではないか、という焦燥感から来る不安のせいだ。
2人は、芸能ニュースや共通の友人の話などを適度にしながら、茹るような猛暑の中を東京駅から日本橋方面に、ぶらぶらと歩き、ビルの合間でひっそりと営業している定食屋に入った。
「聡君、実は報告したいことがあって。」
「何だ?」
「えっとね。就職先が決まったの。」
「お!ついに受かったのか。どこの会社だ?」
「なんとね…、愛知商会なの。」
「すごい。そこは大手だぞ。俺より給料が良いんじゃないか?電話では、かなり苦戦してる話しぶりだったのに、美雨やったな。おめでとう。今日はお祝いだな。」
と言ったあと、聡は照れくさそうに鞄から小さな箱を差し出した。

 

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みかぺん

初めて小説を書いてみます6

今日も、つづきです。

 

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「美雨は就活はどーなの?順調?」
「ううん。全然だめ。まだ内定1つももらえてないの。筆記は通過して面接まで進んでるのが何社かあるんだけどね、なかなか難しくって。」
「就活生は大変だねぇ。でも、美雨ならきっと上手くいくよ。」
「ありがとう。お姉ちゃんみたいに資格とれる大学に行っとけばよかったなって思うよ。」
「そんなの関係ないって。美雨は英語ができるから凄いと思うよ。」
「英語ができるだけじゃ駄目って思い知らされてる。」
「そうなんだね。まぁ、なんとかなるでしょ。がんばるんばー‼あははは‼」
美雨は、本当は聡のいる東京の会社も受けたかったが、2人姉妹の両方が遠くへ出て行っては両親が可哀想かと思い、名古屋での就職を決めていた。でも、そんな自分の思いやりを知らず、好き勝手に生きる姉が少し不満で羨ましかった。

 

☆☆☆

 

みかぺん

初めて小説を書いてみます5

早いもので、もう5回目。みかぺんです。

 

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家に帰ると、長浜晴夏(はるか)が、リビングのソファーに横たわってファッション雑誌を読んでいた。
「美雨おひさー。元気してたー?」
「うわぁ。お姉ちゃん久しぶり。帰ってきてたんだ。」
「うん。さっき着いたとこ。やっぱ愛知は遠かねー。」と言いながら、ピョコンと起き上がって、うぅーん、と伸びをした。
「また新幹線で来たの?」
「ううん。飛行機にした。」
「そのほうが良いね。ってか、いきなり帰ってきて、何か用事でもあるの?」
「ちょっと遅いゴールデンウィークやに。先輩から優先的に取れるち、うちはやっとなの。」
「看護師の世界は大変だね。」
「そ。だいぶ慣れたけどね。」
「それより、その大分弁、すっかり板についちゃって。やだわー。」
「患者さんは年寄りが多いから、みんな方言が強いんよ。」
姉の晴夏は、別府にある病院で働いている。別府では地面から温泉が沸いているため、一般家庭にも天然温泉が出るため、毎日無料で入りたい放題だと聞いて、アトピー肌の晴夏は就職先を決めた。まだ別府郊外の寮に住んでいるため念願の温泉付きの家ではないが、週末に手頃に行けるだけでも満足しているようだ。

 

☆☆☆

 

《つづく》

 

みかぺん